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アートルポ

世田谷パブリックシアター、音楽事業部、生活工房、世田谷美術館、世田谷文学館が区内それぞれの拠点で、独自性と創造性に富んだプログラムを展開しています。芸術の輪を広げる活動、次世代を育む活動、地域文化を創造する活動など多彩な取り組みをご紹介します。

2017年も盛りだくさんダッタ 世田谷美術館

2018/05/01更新


改修工事/花森安治の仕事展、エリックカール展

 2017年、世田谷美術館は7月から年明けしばらくまで、改修工事のため全館休館した。工事は外壁の検査、補修、洗浄。空調機の交換。館内照明器具のLED化が主たる内容だった。さて、どこがどうかわったかといえば、見た目、そう変化はない。が、これは建物を大切につかい、長く愛していくためのメンテナンスである。LED化の工事でもっとも気をつかったのは、当然、展示室。照明の善し悪しは、展示効果に直結するから、当館の学芸諸氏も経験値と想像力をフル活動させた。その結果=成果は、2018年1月13日開幕の「ボストン美術館パリジェンヌ展」の会場に反映した。作品の保全上も、また鑑賞者の視覚的満足度も大いに向上させることができたと思う。
 さて、2017年の企画展は改修工事までに「花森安治の仕事―デザインする手、編集長の眼」と「エリック・カール展」を開催した。花森安治は『暮しの手帖』の敏腕編集長として鳴らした人だ。戦時下、人々の当たり前の暮らしが崩壊する現実を目の当たりにし、結果、ああした実のある暮らしに深く寄り添った生活雑誌を創った。さまざまな縁を経て、彼が描いた『暮しの手帖』の表紙原画や関連資料が当館に収蔵されており、これが本展開催の原動力となった。NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』で大活躍した花山伊佐次。その花山を演じた唐沢寿明さんは、軽妙だけど力強い演技力で、花森安治=突飛なところのある熱血漢で正義感満載というイメージを世に流布した。そのせいか、展覧会の来場者はじつに多彩であり、人それぞれに花森の仕事を吟味していただけたものと思う。閉幕直前の4月6日には皇后陛下の行啓をいただき、このことは本展の記憶となった。
 ついで「エリック・カール展」。じつは当館が初めて試みた、“ちっちゃいお子さまがたくさんかな”的展覧会だった。開幕まで約2年という大急ぎの準備だったが、じつに13万人を超える来場者を得た。絵本の原画を多々並べるエリック・カール展は、これまでにいくらもあったが、本展の肝は、エリックのアーティストとしての側面に光を当てることだった。豊かな創造性といえば平たくなるが、自由な造形力と闊達な色使いの魅力に溢れる作品が会場を彩った。そして御大・エリックも3日間にわたって当館に足を運んでくれた。会場ではお客様が「ホンモノ?ホンモノ?エ!」と驚きながら手を振り、エリックもこれにビッグスマイルで応えるという素敵な光景とあいなった。それにせよ、1968年の開館以来、これほど多くのベビーカーが館の内外に集まったことはない。断じてない。観覧料のかからないお子様までを数えれば、優に15万人を超える人たちが行き来する、セタビ・2017・梅雨空もふきとばす賑わいであった。 [橋本善八(世田谷美術館 学芸部長)]


世田谷文学館 「山へ!to the mountains」展

2018/04/27更新


2017年7月15日(土)〜9月18日(月・祝)

「百の頂きに百の喜びあり」
 これは『日本百名山』など数々の名著を残した作家、深田久弥の名言である。『日本百名山』は「山の品格・歴史・個性」を基準に、深田が半世紀に及ぶ登山歴によって登頂した山々から100の名峰を選び抜き紹介したもので、第16回読売文学賞を受賞。出版から半世紀たった今でも登山愛好家のバイブルとして読み継がれている代表作である。深田は一刻として同じ姿を現さない山と向き合い、その多様なあり方に生涯魅了され、山をテーマに著書を書き続けた。
 世田谷文学館がオープンした1995年、その深田の功績を核として「『日本百名山』の深田久弥と山の文学展」を開催したが、本展は続編として位置づけて企画が進んだ。国民の祝日「山の日」制定や昨今のカジュアルな登山ブームを背景に、どのようにして老若男女を対象に楽しめる展示にするか、登山をしないインドア派にも体験的な山の魅力を伝えることができるのか・・・。切り口の斬新さが求められた。
山からの体験的な英知を言葉で伝えた人々
 まず、展示の章立てを登山に見立てて1合目から10合目(頂上)とし、明治から平成へ1世紀以上続く日本の近代登山史をなぞる形で進んでいく構成を組んだ。
 日本のアルピニズムの礎に貢献した小島烏水、山の名著を残した深田久弥、女性で世界初の7大陸最高峰登頂を達成した田部井淳子、写真家で作家の石川直樹を中心に、高山植物学者である田辺和雄、数々の山小屋を設計した建築家の吉阪隆正、「孤高の人」を描いた漫画家の坂本眞一を加えた7人を取り上げ、山に向き合う多様なスタイルを紹介した。
 7人は時代を超えて同じ<山>というフィールドで多様な<知>と<表現>を繰り広げた作家たちであり、その言葉や箴言を作品や資料、遺愛の品々とともに展示。また山そのものの魅力を伝えるために、山岳写真家4人による名作写真や、山の成分である岩石の実物も合わせて展示した。
 「山」にまつわる表現の魅力と奥深さを、幅広い層に伝えたいという展覧会のねらいは届き、アンケートでは30代から60代を中心に、あらゆる世代が来館。初めて文学館に脚を運んだ方々も半数を上回った。また登山服姿の来場者などアウトドア派にも大きな関心を持っていただけた展示となった。
 [井波吉太郎 (世田谷文学館 学芸員) ]


乳幼児向けワークショップ

2018/04/25更新

乳幼児向けワークショップ
『あかちゃんのための えんげきワークショップ 〜物語にとびこもう』

地域に開かれた劇場、世田谷パブリックシアターでは、年間を通じ参加対象も多彩に様々な演劇ワークショップを行っています。その中でも、乳幼児向けのワークショップはすぐに募集定員に達してしまう人気ぶり。2018年3月2日に世田谷パブリックシアターの稽古場で行われた1歳半から3歳対象の『あかちゃんのための えんげきワークショップ 〜物語にとびこもう』の様子をご紹介します。

今回の進行役は、乳幼児と大人のための演劇作品作りやワークショップ活動を展開している俳優、演劇教育者の弓井茉那(BEBERICA)さん。参加した14人のあかちゃんとその保護者が会場のマットの上を自由に歩きながら互いにあいさつするところから始まります。その後、手と手でタッチ、おしりとおしりを合わせてあいさつなど身体を使いながら気持ちをほぐしていきます。次に、進行役がたてるささやかな音に耳を澄ませたり、大人があかちゃんの動きを真似してみたりと、あかちゃんも大人たちも飽きさせません。やがて照明が暗くなり、波の音とともに海の光が映し出されると、イカやクラゲが登場します。あかちゃんは小魚になって海の中へ。仲間と一緒に遊んだり、ごはんを食べたり、サンゴのかげで眠りについたり一日を楽しく過ごします。ところが散歩の途中で大きなクジラにのみ込まれて大ピンチに。でも、最後にはみんなで力をあわせて脱出します。
物語にとびこんだあかちゃんにとって、五感がたっぷりと刺激される豊かな時間となりました。また、大人にとっても子どもと過ごす毎日へ沢山のヒントがあったのではないでしょうか。

●今後のワークショップについては劇場ホームページでお知らせします



世田谷パブリックシアター演劇部 中学生の部

2018/03/19更新

世田谷パブリックシアター演劇部 中学生の部

「演劇」を日常のなかに、あるいは「日常」を演劇にとりいれる

2月のある土曜日、世田谷パブリックシアターの稽古場に、学校も学年も様々な12人の中学生が集まり、「登場人物をつくる」というワークショップに取り組んでいました。ゲームのような自己紹介に始まり、ペアになって体を動かし、おしゃべりし、そして、この日のメイン、「登場人物をつくる」活動へと向かっていきました。

これは、2013年度から始まった中学生を対象としたワークショップ『世田谷パブリックシアター演劇部 中学生の部』でのひとコマ。 「学校に演劇部がない」、あるいは「違う部活に所属をしていて兼部ができない」。それでも「演劇をやりたい!」と思っている中学生たちが集まり、日常の生活では出会えない仲間と意見を交わし、 身体を動かしながら、そこから生まれるコミュニケーションをベースに演劇づくりをしています。

創部のきっかけは、当時演劇部のなかった、とある世田谷区立中学校の副校長先生が、部活で演劇をやりたいという生徒の要望を世田谷パブリックシアターに相談したことでした。
同じ頃、演劇部のある区立中学校からも「同じ教員が複数の部活の顧問を兼任していて十分な指導が難しい」などといった状態を聞いていた世田谷パブリックシアターは、これらを受けて区立中学校演劇部の活動支援を始めたのです。そしてこの支援をしていく中で、どうしても演劇部をつくれない学校があることや、演劇部に所属していなくても演劇に興味をもっている中学生が多くいることなど、様々な事情を知りました。 こうして、「学校個別の部活動」へ向けた支援から「演劇部であってもなくても、演劇に興味のある中学生たち全体」に向けた支援へとカタチを変え、『世田谷パブリックシアター演劇部中学生の部』となったのです。劇場が中学生に向けて「場所(稽古場)」と「演劇の専門性(スタッフ)」を提供し、ワークショップを通して中学生の今しかできない演劇をつくるサポートをしようという、公共劇場ならではの創造活動支援といえるでしょう。

もちろん、この演劇部は俳優養成所ではありませんし、そのための専門的なレッスンをするわけではありません。「台本が与えられ、それを読み、覚えて、舞台で表現する」という学校演劇のイメージとも異なります。ここでは、中学生の日常の生活のなかにある演劇的なものを探したり、自分や他者の言葉から演劇的な言葉をつむいだりしながら、演劇(的なもの)をつくっています。

舞台を観るのが好きだったり、演劇に興味のある中学生はもちろんですが、演劇をやったことがなくてもあまり演劇を観たことがなくても大丈夫。ふだんの生活のなかにあることが、すでに演劇づくりの一つの要素なのです。きのうまで全然知らなかった人といろんなことを話して、自分の思いを伝えたり、他人の気持ちを受け止めたりしながら、みんなでひとつの演劇をつくる。これって結構気持ちのいいものです。そんな体験を求めて、ぜひ『世田谷パブリックシアター演劇部 中学生の部』へアプローチをしてみてはいかがでしょうか。

演劇は日常にあふれています──。

『 世田谷パブリックシアター演劇部 中学生の部』は、1年間を第一期(5〜7月)、第二期(9〜11月)、第三期(1〜3月)に分けて実施しています。第一期は「演劇を構成する要素」、第三期は「中学生の興味・関心」をテーマに短期複数回のワークショップを、第二期では台本を用いずに参加者自身が考えて演劇作品をつくる、長期間のワークショップを実施しています。 これまでの第二期では、2013年度は古典『竹取物語』を自分たちの感覚で演劇作品にし、14年度は「お金」というテーマからオリジナルの物語『人類と金』をつくり、区立中学演劇部の発表会である世田谷区立中学校演劇発表会へエキシビションで参加、発表しました。

※これからの部員募集については、劇場ホームページやチラシをご覧ください。


地域の物語ワークショップ2017 レポート

2017/12/04更新

地域の物語ワークショップ2017 レポート
『生と性をめぐるささやかな冒険』<夏の終わりの夕涼み編>

「地域の物語」とは、地域に暮らすさまざまな人々と向き合い、物語を掘り起しながら、従来の形にとらわれない演劇をつくりあげるワークショップです。世田谷パブリックシアターが開場した1997年から継続しています。2017年9月には、2016年度のコースを担当していた進行役たちが集まり、<女性編><男性編>コースの合同編を企画。<夏の終わりの夕涼み編>と題し、性自認が女性の方、男性の方、どちらでもない方など、いろいろな方が集まって、あらたな「生と性をめぐるささやかな冒険」を始めました。進行役のおひとり、花崎攝さんにご報告いただきます。


『生と性をめぐるささやかな冒険』<夏の終わりの夕涼み編>
2017年9月4日、7日、8日(全3回)
進行役:柏木陽、関根信一、花崎攝、山田珠美

文:シアタープラクティショナー花崎 攝

<夏の終わりの夕涼み編>はトイレットペーパー・アートで始まりました。トイレットペーパー・アートなんて、そんなジャンルがあるのかないのか定かではありませんが、思いついて初めてやってみたのです。今回のワークショップのテーマは「曲がり角」でした。参加者のみなさんに、どうやって「曲がり角」についてのイメージを膨らませ、「曲がり角」についてのエピソードを表現してもらうか?そうだ、手始めにこれまでの人生を思い出し、トイレットペーパーで自由に表現してもらったらどうだろうと思ったのがきっかけです。

人生は道に例えられます。トイレレットペーパーは長く、直線ですが、簡単に折り曲げたり、破いたり、切ったり、丸めたりすることもできます。作業が始まると、あっという間に予想をはるかに超える圧巻の光景が出現!稽古場中に参加者の人生を表すトイレットペーパー・アートが張り巡らされました!まさかこれほど参加者の方たちの創造力がはじけるとは!



そして2日目には、「曲り角」にまつわるエピソードを発表してもらいました。出産時の話あり、恋人との別れ、在日女性との結婚の話あり、親子関係もあればED治療の話あり、未来にやってくるかもしれない子どもへの手紙にホスピスの話。期せずして、ひとの一生にわたる出来事の数々がエピソードとして語られました。並行してダンスも踊りました。懐かしの「ジェンカ」です。私は永六輔作詞、坂本九歌の「レッツ・キス 頬よせて・・・」にはどうも苦手意識を持っていたのですが、なかにし礼詞、青山ミチ歌のヴァージョンは、パンチが効いていて媚びがなくカッコイイのです。振り付けをアレンジして、みんなで息を切らして踊りました。

さて、3日目。ささやかな稽古場発表をしました。2日目の発表のなかから、参加者にシーンにしたいエピソードを選んでもらい、チームを作り練習しました。どうしたらそのエピソードがよりよく伝わるか、食事の時間も惜しんでギリギリまで工夫されていた皆さんの姿が印象的でした。直前のお誘いだったにもかかわらずお客様にもお越しいただき、3日で作ったとは思えないなかなかの発表になりました。

正直なところ、私は合同編に少し不安を抱いていました。これまで、男性編と女性編は発表の時以外は別々にワークショップを重ねていました。合同編になってもこれまでのようにのびのびと表現できるだろうか?ヘテロの人もいれば、LGBTの人もいる。以前からのリピーターもいれば、今回初参加される方もいる。ギクシャクすることはないだろうか?ところが、始まってみると、それは全くの杞憂でした。もちろん合同編への参加を希望された方たちだったからという条件付きですが、これまでの積み重ねのなかで、セクシュアリティについて隠す必要のない場、初めてでも臆することなく表現できる場になってきている手応えを感じました。多様な人たちと一緒に作業できることはどんなに豊かなことか!とても有難く感じています。




●地域の物語2018「生と性をめぐるささやかな冒険」発表会
2018年3月18日(日) シアタートラム  出演:ワークショップ参加者
※詳細は決まり次第、世田谷パブリックシアターのホームページでお知らせします。