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生活工房 『ミャオ族の刺繍と暮らし展』より

山々に踊る、家族のためにつくられた美しき衣装

生活工房では昨年より、世界各地の山岳地に住む人々の暮らしを紹介していくシリーズ展示「クライム・エブリ・マウンテン」を始動しました。第1弾として取り上げたのは、中国西南部・貴州省の山岳地帯に多く暮らす、ミャオ族(苗族)です。
実はこの展覧会の始まった時期(11月中旬)は、ミャオ族の暦で新年を迎える頃。ミャオ族の村々では、棚田の稲刈りの終わった地域から順に、お正月の準備をするのです。その他にもたくさんある祭礼や、農耕の時節などミャオ族の一年を紹介しながら、「苗族刺繍博物館」(常滑市)からお借りした美しい民族衣装など60点を展示しました。

ミャオ族の衣装は、驚異的に緻密で美しい刺繍で知られています。しかしそれは、裕福な人たちがだけが着るものではありません。男女の出会いの場でもある祭りの際に着て美しく映えるよう、少女たちが競い合って作ったり、母が娘のために作ったりしたものです。なかでもとくに細かな詩集を施すのは、幼子のためのもの。赤ちゃんの背負い帯は、「布目から魔が入る」という言い伝えもあって、下の布地が見えないほどにびっしりと刺繍で埋め尽くします。その厚みを持った刺繍を見ていると、環境の厳しい山地で幼い命を守るために、ひと針ひと針に祈りを込める母の無償の愛が伝わってきます。

展覧会の最中、よく来場者からこんな質問を受けました。「これだけの刺繍をするのに、どのくらい時間がかかったのですか?」――さて、いったいどれほどの時間がかかったのか・・・。自給自足の生活の中では、おそらく丸一日刺繍をしている、などということはないでしょう。野良しごとの合間合間に、懐から小さな布をとりだしては、針を刺す。その布片を服に縫いとめて、このような重厚な衣装が出来上がるのです。さらに糸の材料(綿、絹)を育て、紡ぎ、染め、織るのも自身でやっていることを考えると、この服1点に凝縮された時間の途方もなさを感じます。

展覧会場で来場者が目にしていたのは、刺繍の中に確かに縫い込まれた、ミャオ族の人びとの「祈り」であり、「時間」であったのかもしれません――。

「クライム・エブリ・マウンテン」シリーズ第2弾は、2018年9―10月に「漆がつなぐ、アジアの山々」展と題して、中国から東南アジアまで山地帯で作られている多種多様な漆器を取り上げました。さあ、第3弾はどの山に登ることになるのでしょうか。 
 [文:生活工房 竹田由美] [撮影:田中由起子]


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生活工房   『ミャオ族の刺繍と暮らし展』より