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6月25日号(Vol.230)
SETAGAYA ARTS PRESS年3回発行 世田谷パブリックシアター芸術監督 野村萬斎
せたがやアーツプレス19号

財団活動リポート

世田谷パブリックシアター@ホーム公演

談:小宮山智津子(担当プロデューサー)  取材・構成:川添史子

――世田谷区内の特別養護老人ホームなどで芝居を上演する《世田谷パブリックシアター@ホーム公演》が今年11年目を迎えます。この事業がスタートしたそもそもの経緯から教えてください

 世田谷パブリックシアター開場準備室から劇場の業務に携わってきましたが、初代芸術監督の佐藤信さんの方針でもあり、スタート時から自分でも取り組みたかったのが、演劇に興味がある方だけでなく、劇場に来たことがない方たちと劇場をつなぐために何ができるかでした。例えば2003年から2011年に実施した《世田谷パブリックシアター@スクール公演》では、オリジナルの参加体験型の芝居を俳優たちとつくって世田谷区の小・中学校で上演し、子どもたちの反応もとても良かった。この手応えを踏まえて次の展開として考えたのが、劇場に足を運べない高齢者の方たちへ向けた《@ホーム公演》で、2009年に企画案をまとめ、2010年に5つの施設で試演、本格的に始動したのは2011年でした。

――まず試演されたんですね。

 はい。試演段階で施設の方たちが「いつもは寝てしまう人、途中で立ってしまう人が最後まで観ていた」「見たことのない表情を浮かべていた」と、まず驚いてくださったんです。外部から人がやって来て、手が届くような場所でお芝居をする・・・・・アートを介すると、日常にはないことが可能になるんですよね。あの時、各施設の皆様が門戸を開いてくださったことで実現した事業だと感じます。

――初年度から関わるノゾエ征爾(脚本・演出・出演)さんは、ご自身の舞台作品に《@ホーム公演》での体験が生きていると話していらっしゃいます。現在では高齢者の大群集劇なども手がけていますし、アーティストへの影響も生んだ事業です。

 アーティストに地域に根ざした新たな機会をつくり出すのは、公共劇場の企画制作者だからこそできること。ノゾエさんにとっても一つのチャレンジだったと思いますし、現在まで取り組む熱量に変化はありません。一回一回が真剣勝負であるという点では俳優たちにとっても通常の舞台と変わりませんし、彼らが持つ技術と集中力は場の空気を一瞬で非日常に変えられる。これは年齢に関係なく理屈なしに伝わりますし、彼らの表現に一途なところを常に信頼しています。

――10年間の変化、今後の目標について教えてください。

初年度の公演で、俳優が《ふるさと》を歌ったら、皆さんが一緒に口ずさんでくださった瞬間は印象的でしたね。それ以来ノゾエさんも必ず全員で歌える場面を入れています。施設職員さんの出演箇所もあるのですが、皆さんの演技が上手くなってきたのも変化の一つ(笑)。「今年も世田谷パブリックシアターさんが来ましたよ〜」と、各施設の皆さんの日常会話に劇場名が自然と出てくるのがうれしいですね。4、5年前からは障害者施設からも申し込みが入るようになり、自然な形で広がりが生まれています。とはいえ、やるべきことは劇場公演と同様、「興味を持っていただける作品をつくる」こと。初心に返り、気を引き締めて取り組んでいきます。
                                     

[撮影:梅澤美幸]

【お知らせ】
6月に上演を予定していた「あっとホーム公演」は、新型コロナウイルス感染症の拡散防止のため、本年度の公演を中止することといたしました。
公演を楽しみにしてくださっていた施設の利用者さま、職員のみなさまには大変申し訳ありません。
一日も早い収束を祈るとともに、また「あっとホーム公演」でお会いできる日を楽しみにしています
世田谷パブリックシアターHP@ホーム公演

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世田谷パブリックシアター@ホーム公演