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アートルポ

世田谷パブリックシアター、音楽事業部、生活工房、せたがや国際交流センター、世田谷美術館、世田谷文学館が区内それぞれの拠点で、独自性と創造性に富んだプログラムを展開しています。芸術の輪を広げる活動、次世代を育む活動、地域文化を創造する活動など多彩な取り組みをご紹介します。

職場体験のご報告

2019/12/02更新

職場体験のご報告
                   〈巻子の取り扱い訓練2015年〉

世田谷文学館

中学生学芸員の活躍
 2006年度から、当館は世田谷区立中学校の「職場体験」プログラムに参加しています。これまでの13年間で135名(2019年10月末現在)を受け入れました。中学2年生が体験する職種は、博物館の事業運営を担う学芸員の仕事が中心となります。図書資料の整理や、展示と催事のお手伝い、そして受付での接客など、実際の業務を体験します。近年では展示資料の解説文作成や、大学生との共同実習など、内容も多岐に亘っています。

スタッフにとっても、大切な体験
 職場体験は、私たちスタッフにとっても特別なものです。1人ひとりとの出会いには、それぞれ物語がありますが、今回、思い出深い活動をご紹介します。
 それは、支援プログラムで特別にご一緒した、中学3年生との活動です。作業は、納品された冊子の見返しにDVDを貼って、「小中学生向け事業」の報告書を完成させる内容でした。初日、作業が単調なためか、2人の緊張感は乏しくなり、作業効率が落ちていきました。そこで翌日は「その都度小分けに渡される材料を、時間計測しながら組み立てる」、「良いアイディアを思いついたら試してみる」をルールに再開したのです。作業を区切り、時間を計ることで緊張を促し、業務の効率化を図れると考えたのです。「次の材料をください!」。開始早々、張り切って1回目のノルマを達成したのは、B君でした。前日には「今日は、天気予報で午後から雨だって。〇君は傘を持ってでかけたかな?」と、作業に身が入らず空ばかり眺めていた彼は、仕事に熱意を持ち始めたのです。勿論A君も、回を追うごとにそのスピードを速めていきました。
 2人の作業に差が生じ始め、そろそろルールを解除しないといけないと感じた時でした。「はい、出来ました。自分の分をやらずに、次はA君を手伝ってもいいですか?」……。B君は、自分で最も良い方法を考えたのです。単純労働の競争が善意の奉仕へと、職場体験が質的変化した瞬間でした。目の前には報告書とDVDと両面テープ。ただ、テープを貼るという行為の中に、様々な気づきが隠されていました。「実験して、ごめんね。次は昨日みたいに、一緒に楽しくやろうね」、「うん。でも、今日も午後から雨だって、X君大丈夫かな?」。その後は会話を楽しみながらも、当初は無理であろうと思われていた目標500点の作業を完了することが出来ました。仕事を通じて人が輝けることを、職場体験の中学生は教えてくれます。私は空を見上げると、彼らの笑顔を思い出します。   [文:世田谷文学館 佐野晃一郎]




せたがや和の音楽祭

2019/12/02更新

せたがや和の音楽祭
<音楽事業部 2020カウントダウンコンサート>

東京2020へ向けて、カウントダウン!

 アメリカ合衆国のホストタウン・共生社会ホストタウンとして、また馬術競技開催の地として大きな役目を担っている世田谷区が、東京2020大会を「音楽の力で盛り上げていこう!」とカウントダウンコンサートを開催しました。
 世田谷区から日本文化の魅力を発信。会場は熱気に包まれました。

エネルギー溢れる太鼓のリズム
 舞台に明かりが照らされると、ステージに並べられたたくさんの和太鼓と子どもたちの姿が。「ソーレッ!」という掛け声とともに『千の海響』(林英哲作曲)の演奏がスタートし、太鼓の豪快なリズムとともにコンサートの幕が開きました。
 「Setagaya太鼓塾」は、和太鼓への情熱をもった世田谷区の子どもたちが、東京2020を応援しようと「キックオフコンサート」(2020年7月開催)出演を目標にした3年間プロジェクトです。小学5年生から高校生まで総勢68名の子どもたちによる和太鼓の音は大迫力!体の芯までその振動が伝わってきます。
 実は、Setagaya太鼓塾にとってはこれが初舞台。一人ひとりが大きな拍手を受け、これまで一生懸命積み重ねてきたことを披露できた、と充実感あふれる表情が舞台袖ではたくさん見受けられました。

東京2020、そして未来への挑戦
 東京2020を1年後に控え、保坂展人世田谷区長が、林英哲Setagaya太鼓塾塾長や吉越奏詞選手(パラリンピック馬術)、寺田明日香選手(陸上競技)とともに、未来への挑戦について熱い意見を交わしました。
 生まれつき脳性まひを抱えた吉越選手は、治療の一環として行ったホースセラピーで馬と出会い、そこから馬術競技の道へ進み、大会出場を目指しています。
 また、寺田選手は、ハードルで数々の成績を残すも相次ぐけがや病気で一度は現役を引退。しかし、現在は「ママさんアスリート」として大会を目指し、9月には日本新記録をマークしています。
 Setagaya太鼓塾で和太鼓指導を行ってきた林英哲塾長は、「太鼓奏者はアスリートに近い」「和太鼓は身体全体が楽器の一部となるため、入念な準備運動が必要」というお話も。和太鼓とスポーツ、似ている部分が非常に多くあるようです。
 こうした各方面で活躍されているゲストの方々のお話は、大変貴重なものであると同時に、東京2020に対する期待をより一層膨らませるものでした。

力強さと華やかさで締めくくられたエンディング
 林英哲塾長、英哲風雲の会による演奏が始まると、空気が一変。圧倒的な響きと洗練されたパフォーマンスで会場はピリッとした緊張感に包まれました。
 そして、いよいよ今回のメインであるSetagaya太鼓塾と東京都市大学付属中学校・高等学校吹奏楽部によるスペシャルなコラボレーション。作曲家・宮川彬良氏がこの日のために、冒頭で演奏した『千の海響』のブラスバンドのパートを書き下ろしました。和太鼓と吹奏楽の異色の組み合わせは大きな相乗効果を生み、和太鼓の力強さと吹奏楽の華やかさでステージのボルテージは最高潮に!観客を圧倒する熱い1日が幕を閉じました。

さあ、みんなで応援しよう!
 東京2020は、もうすぐそこ。この世界規模の祭典が、身近な場所で開催される幸運と感動を、多くの方々と分かち合っていきたいと思います。Setagaya太鼓塾の集大成である下記コンサートで盛り上がり、東京2020を一緒に楽しみましょう!  [文:佐藤根真愛(公演制作担当)]

〜2020キックオフコンサート〜
「 和のこころ Ring of Peace 」●2020年7月5日(日) 昭和女子大学人見記念講堂
※予定していたコンサートは新型コロナウイルスの影響で、中止となりました。



Setagaya 太鼓塾

2019/08/01更新

Setagaya 太鼓塾
<音楽事業部>

世田谷から世界に向けて 子どもたちの和太鼓が響く!

東京2020を応援したい!「Setagaya 太鼓塾」では、子どもたちが集まって、世界に知られる太鼓奏者、林英哲塾長のもとで太鼓の練習に励んでいます。2020年に世田谷区主催「2020せたがやキックオフコンサート」で和太鼓を披露するため、18年から3年かけて行っているプロジェクトです。
現在は、今年8月12日に開催する「〜2020カウントダウンコンサート〜せたがや和の音楽祭」に向けて猛練習中。
2人の参加者から、和太鼓にかける思いを聞きました。話してくれたのは、村上一樹君と小西拓翔君、ともに小学6年生です。

―――太鼓塾にはどんな子たちが集まっていますか?
村上 「小5から中高生まで70人くらいいて、水組、風組、空組に分かれて稽古しています。いろいろな学校から集まって来ているので、入ったときは知っている人はひとりもいませんでした。」
小西 「僕たちも、お互い知らない同士でしたが、練習しているうちに、自然にしゃべるようになったよね。」
―――先生方や練習の様子はどうですか?
村上 「林塾長、講師の先生方が最初に演奏してくれたとき、迫力があってすごかった。あとで動画も見たけれど、めちゃめちゃカッコよかった。」
小西 「練習の日は早めに来て、自分たちで太鼓を出して自主練をしています。6時になると先生方が来て、2時間のワークショップです。始めは少し疲れるけれど、太鼓を打っているうちに慣れてきて、最後の方は大丈夫になります。」
村上 「叩くと楽しくて、疲れを忘れるよね。」
小西 「最初のころは手のひらにマメができたけど、持ち方を調整したり、手の皮が強くなってきたりして、今はできなくなりました。」
―――コンサートで演奏する曲について教えてください。
村上 「《千の海響》という7、8分くらいの長い曲です。長胴太鼓、桶胴太鼓、締太鼓という3種類の太鼓があって、僕は長胴太鼓という主役の太鼓を叩きます。」
小西 「僕も長胴太鼓で、派手に大きな音を出したいので、自分からやりたいと言いました。《千の海響》には、『さあさあ、始まる、人々ようこそ、どどん、どどん、どんどん打ちましょ・・・・・・』という歌詞があって、それを心の中で歌いながら、歌に合わせて太鼓を打ちます。」
村上 「力まかせに太鼓を打っているように見えるかもしれませんが、そうじゃなくて、みんなでひとつの歌を奏でている感じなんです。」
―――コンサートも近づいていますが、心境は?
村上 「みんなに和太鼓の音や力強さを伝えられるので、楽しみです。」
小西 「東京でオリンピック・パラリンピックが行われるのは50年に1度くらいだから、自分も応援していきたいです。貴重な体験になると思います。」

 ≪ 塾長・講師から ≫
林英哲 塾長 「和太鼓を経験した子は、自分を表現するようになったり、積極的になったりということがよくありますが、最終目標やイメージを押しつけず、のびのびと叩いてもらっています。僕らが身体で見せて、身体で伝えるものを、自然に受け止めてくれればいい。太鼓塾は自らやりたいという子どもたちが集まってきているので、よく頑張っています。期待してください。」
田代誠 講師 「練習を重ねるうち、みんな心を開いて、いい雰囲気になってきています。子どもたちが自発的に参加した気持ちをくみ取って、ステージでベストな表現ができるように後押ししていきたいです。」
辻祐 講師 「『令和面太鼓』という、即興で太鼓を叩く演目が子どもたちは大好きで、悩みながらも自分なりに考えて、挑戦しています。その生き生きした姿を見ていると、成長しているなと感じます。」

[取材・文:北島章子] [撮影:松谷靖之]


届け、美術とふれあう楽しさ!

2019/04/12更新

届け、美術とふれあう楽しさ!
美術鑑賞教室 向井良吉作《花と女性》(1969年)の前で

世田谷美術館の出張授業とインターン実習

 2018年秋。とある区立小学校の4年生の図工の授業を覗くと、すまし顔をしつつも張り切った子どもたちを前に、微笑みと堅い面持ちを同居させ、教壇に立つ若者の姿が。そう、世田谷美術館の「出張授業」です!
 当館では長年、区立全小学校の4年生を「美術鑑賞教室」に迎え、館内を巡る美術館体験を実施する一方で、希望校には、鑑賞予定の所蔵品を中心に紹介する「出前授業」を、事前(時に事後)に行います。この授業を行うのは、東京学芸大学の主に3年次に在籍する当館インターン実習生たちです(毎年約10名)。彼らは美術館で毎週行う勉強会で、担当学芸員らと共に授業案の検討と改善を重ねています。
 本稿にご紹介する出張授業では、アルミニウム鋳造のレリーフ作品・向井良吉作《花と女性》(1969年)をテーマに、まず、「レリーフ」という造形表現の解説を交えながら作品図版を鑑賞しました。次に、アルミホイルを手に文房具等の日用品(自分たちの手や顔も!)の型どりをして小さなレリーフを各自工作した後に、全員の作品を黒板に掲げて鑑賞タイムを堪能!
 「美術鑑賞教室」の当日には、授業担当の学生らと再会し笑顔を交わす児童もいました。館内を巡るなか、美術館の地下にある創作の広場に設置された《花と女性》を鑑賞しに来た子どもたち。広場の壁全面をほぼ覆う銀色に煌めく壮麗なレリーフの前で佇んだのち、その作品全体に浮き出ている色々なモチーフや、装飾的な細部一つひとつを目で追い、発見します。少し離れて、作品全体もじっくり鑑賞。
 インターン実習生と学校との連携により、肩ひじをはらずに美術と出会う楽しい時間を、今後も子どもたちに届けていきたいと思います。  [文:矢野ゆかり(世田谷美術館学芸部普及担当学芸員)]

                                





第7回せたがやバンドバトル決勝大会

2019/04/12更新

第7回せたがやバンドバトル決勝大会
2019年2月17日(日) 世田谷区民会館

人生、ここまで来れたのって、きっとバンドのおかげじゃない?

晴れやかな笑顔、悔しさをにじませた顔・・・・・。グランプリ発表の会場に集まるさまざまな思いのバンドマンたち。仕事の合間に練習を重ねた成果を、この決勝大会にぶつけて熱くならないわけがない。とはいえ、各バンドの演奏レベルは高く、厳しくも温かい審査員の講評を、真剣に頷きながら聞く出場者たちは、充実感にあふれ、少年のようでもありました。

■熾烈なライブハウス予選
 昨年夏より始まったCDによる音源審査、そして下北沢、三軒茶屋のライブハウスで行われたライブ予選。これが本当におもしろい。ハードロック、ジャズ、弾き語り、歌のないインストゥルメンタル等、ジャンルもさまざま。家族でほっこり、尖ったオヤジ、枠にはまらないバンドの数々が、ライトを浴びながら白熱したステージを披露する。スタッフによる審査も熱が入るのは言うまでもなく、出場者同士が盛り上げつつも火花を散らす姿が、これぞバンドバトル!

■バンドバトルの目的
 しかしながら、この「せたがやバンドバトル」の真の目的は、優れたバンドを見い出すことではありません。そもそもせたおん(音楽事業部)主催の公演にやや縁遠い、働き盛りの世代に、地域のイベントに参加してもらおうと立ち上げた企画。
 毎回、応募動機の中には「応募のために職場の仲間とバンドを組んだ」「20年ぶりに昔の仲間が集まり、バンドを再結成した」「バンド活動を通して、地元の人と交流したい」というものが数多くあります。バンド活動、すなわち音楽が、人と人とをつなぐもの、そして人を地域につなぐものとなることが目的なのです。予選で戦ったバンドとの交流ができ、その後一緒にライブをしたバンドもあるそう。こういった出場者同士の交流の他に、区内のライブハウスや商店街、協賛各社の応援や協力がイベントを支えています。
 これからもせたがやバンドバトルを通して、地域の交流を深め、人々の新たなつながりを作っていきたいという想いを、少しずつ、そして着実に広めていきたいと思っています。  [文:黒田たま紀(公演制作担当)]     [撮影:中西多惠子]