世田谷パブリックシアター、音楽事業部、生活工房、せたがや国際交流センター、世田谷美術館、世田谷文学館が区内それぞれの拠点で、独自性と創造性に富んだプログラムを展開しています。芸術の輪を広げる活動、次世代を育む活動、地域文化を創造する活動など多彩な取り組みをご紹介します。
受け継がれるDream Jazz Band 精神
2015/07/21更新
11年目を迎えた「Dream Jazz Band Workshop」
楽器の持ち方も知らない初心者を含む世田谷区立の中学生44名が参集、今年も「DreamJazzBand(通称:ドリバン)WorkShop」の開講式が4月に行われました。
昨年、節目の10年記念コンサートを盛大に行い、迎えた11年目の今年、開講式で日野皓正校長は「我々講師たちにとって、ドリバンは宝物です。とにかくいろいろなことがありました。東日本大震災の東北の被災地に行って演奏したり、いろんな活動で方々に出て演奏してくれたり。そして、10年経って卒業生がいまだにサポートスタッフ(通称:サポスタ)として働いてくれている。(新入生に向かって)あなたたちが分からないことがあったら教えてくれたり、椅子を運んでくれたりするサポスタがたくさんいます。僕たちはその人たちを見ていて、よかったなぁ、こんなすごい人たちが生まれたんだと誇りに思っています」と挨拶しました。新入生を歓迎すると同時に、「ドリバンの宝」でもあるサポートスタッフの活動ぶりを日野校長は高く評価し、その伝統と心意気を新入生に語りかけました。
サポスタのメンバーは自らの意思で集まり活動しています。その基盤になるのは、どんな思いなのでしょうか。ドリバンでは、ジャズ演奏を学んだのはもちろん、それ以上に、彼らにとっての「宝物」を得たといいます。
例えば、「先生方からは、演奏する楽しさだけでなく、人のために何かをするという姿勢を見せていただきました。音楽を通して被災地の人たちに何が出来るかを考え、行動したことが私にとってとても良い経験になりました」(高2・女子)「私は話すのが苦手です。しかし、音楽を通して、自分の思いを伝えられるようになりました。それは、日野校長や講師の先生方が言う“演奏を楽しみに来てくれるお客様はもちろん、何か悲しいつらいことがあって来てくれた人にも楽しんで聞いていただく。様々な人の気持ちを胸に、音楽に自分の心を込めて伝える。音楽が上手いだけじゃ人を感動させられない”ということを学んだからです」(高2・女子)。音楽を通して得たのは、「思いを伝える」「人のために」という精神的な成長でした。こうした経験を積んで“ドリバン”から“サポスタ”へ。その根底にあるのは、「音楽のこと以外にも様々な事を教えてくれたドリバン”に恩返しをしたい」(高1・男子)という声に代表されるように「恩返し」です。
「現役時代に、先生方やサポスタの皆さんに支えていただいたので、そのことを今のメンバーにも伝えていきたい」(高2・女子)、「私が現役にときに親身に接してくれたことやDJBplus+(ドリバン卒業生バンド)として演奏する姿に憧れた。サポスタとしてドリバンのために仕事ができることが羨ましかった」(高2・女子)と、一様に自分たちをサポートしてくれた先輩の背中を見て、感謝と憧れに気持ちから自然にサポスタへの道を歩むようになったと言います。
そして、それぞれのこれからについて聞いてみました。「私は音楽を魔法のようだと思っています。大好きな曲を聴けば、自然と嫌な思いが吹き飛んで“また次に頑張ろう”と元気がもらえるからです。一日一日が大切な時間なので、ドリバンの経験を活かし将来に向かって全力で楽しんでいきたいです」(高2・女子)。「音楽は、言葉が通じない他の国に人でも、違う人種でも一緒に楽しむことが出来る。音楽は人と人を通じ合わせ、笑顔にする力を持っていると思う。ドリバンでは演奏のことだけでなく、考え方などいろいろなことを学んだ。このドリバンの精神を、他の場所でも伝えていき、役立てていきたい」(高1・男子)と、実に頼もしい声。まさに“音楽力”“ドリバン力”ここにありといえるでしょう。
8月16日(日)、ドリバンは約4か月のワークショップを経て、『日野皓正presents“JazzforKids”』内で「DreamJazzBand11thAnnualConcert」を行います。また、前日の「日野皓正QuintetLive」では、サポスタたちがDJBplus+として講師たちへの感謝の気持ちを込め、オープニングアクトをつとめます。この晴れ晴れしい舞台の裏には、こうした頼もしいサポスタの活躍があり、今年もまたドリバン精神が受け継がれてゆきます。
※主催:世田区教育委員会 企画制作:世田谷パブリックシアター [写真撮影:牧野智晃]