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アートルポ

世田谷パブリックシアター、音楽事業部、生活工房、せたがや国際交流センター、世田谷美術館、世田谷文学館が区内それぞれの拠点で、独自性と創造性に富んだプログラムを展開しています。芸術の輪を広げる活動、次世代を育む活動、地域文化を創造する活動など多彩な取り組みをご紹介します。

生活工房 ワークショップ

2024/09/26更新

生活工房 ワークショップ
     〈生活工房3F市民活動支援コーナーのリソグラフ〉

世田谷うまれのリソグラフ印刷であそぼう!

世界のクリエイターが注目するリソグラフとは
今、リソグラフという日本生まれの印刷機が、世界各地のグラフィックアーティストから注目を集めています。
コピー機のような見た目をした機械ですが、その仕組みは異なり、孔版印刷と呼ばれるシルクスクリーンと同じ原理で印刷されます。そのため、版画のような版ズレや色ムラが生じ、オフセット印刷やコピー機にはない、独特の風合いをもった仕上がりとなります。
元々は学校や企業などで、大部数の印刷物を安価かつスピーディーに刷ることを目的に開発された機械ですが、若い世代を中心にZINE(自主出版物)の制作が世界的なブームとなる中で、アナログ的な持ち味が再発見されることとなりました。

実は世田谷生まれの印刷機
ちなみにリソグラフを製造している理想科学工業株式会社は、戦後まもない1946年に世田谷区若林で創業された会社です(現在は本社移転)。謄写印刷業からスタートし、1977年に発売を開始した家庭用の「プリントゴッコ」が大ヒットしました。
リソグラフもプリントゴッコも、いわばDIY印刷機。
そのため市民活動の現場でも古くから重宝されており、生活工房3Fの市民活動支援コーナーでも活躍しています。

クリエイティブを刺激するDIYプリンティング
夏真っ盛りの8月10日と11日の2日間、生活工房ではリソグラフを使ったワークショップを開催しました。workshop1
参加者は小学生以下の子どもたちを中心に、その保護者や60代の方までの老若男女。1回1時間のコンパクトな内容で、初めに印刷の原理についての簡単なガイダンスを受けたあと、すぐに版下制作を開始。今回は2色刷りということで、色や形の重なりを工夫しながら2種類の版下を作ります。スタンプやマスキングテープ、写真などを思い思いにレイアウトしたデザインは、まさに十人十色。制限時間ギリギリまで没頭してひたすら手を動かし続ける様子が印象的でした。
完成した版下は、今回の講師を務めてくださったHand Saw Pressのスタッフの方々が手早くリソグラフを操作して印刷。子どもたちは刷り上がる様子を食い入るように見つめていました。
安く・早く・大量に情報を伝達するだけであれば、インターネットに勝る手段はありませんが、リソグラフを使用した印刷物には、インターネットにはない手触りと味があります。
一般にはなかなか利用機会のないリソグラフですが、生活工房3Fの市民活動支援コーナーには常備されており、登録された市民活動団体の方ならご利用可能です。団体登録要件などの詳細については、こちらをご覧ください。
[文:生活工房 大竹嘉彦]
*「リソグラフ」は理想科学工業株式会社の登録商標または商標です[登録商標第2536951号]

workshop3
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世田谷文学館

2024/06/06更新

世田谷文学館
〈2023年12月9日(土)会場:世田谷区立芦花小学校 体育館〉
「落語を楽しもう〜笑いを生み出してみよう」

近隣の子どもたちに「セタブン」に親しんでもらいたい――
そんな思いで2011年にはじまった芦花小学校との出張ワークショップは、これまで写真家や俳優たちと一緒にさまざまな創作活動を体験してきました。コロナ禍を経て、あたらしく落語をテーマにしたプログラムに挑戦。思い切り声を出して、演じて、皆で「笑い」について考えました。


「はみ出し者」を面白がる落語思考
 落語教育家の楽亭じゅげむさんを講師にお迎えし、芦花小学校の4年生約170名が参加した1時間半のワークショップで、伝統芸能の「落語」の演じ方、くすぐり、人を笑わせる楽しさを学び、各自が演者として噺を表現します。
 落語には周りから笑われる「はみ出し者」が登場しますが、早とちりしたり、世間の常識から少しずれているように思われたりすることは、多かれ少なかれ誰にでも経験があるのではないでしょうか。「笑い」とは何かを考え、「笑い」に通じる小さな個性「はみ出し者」を発見する過程は、他者理解に必要な「聞く力」を育むことにもつながります。kouza
 当日、会場には落語を知らない子どもが多くいるようにも見受けられますが、私たちセタブンの職員は「高座」や「めくり」、発表者用の「特製法被(はっぴ)」を準備し、いよいよスタート。

「ええやん!」を連発する子どもたち
 はかま姿のじゅげむさんが登場。まずは、江戸時代から大衆に親しまれた「落語」を鑑賞するためのルールを学びます。大きな拍手、「待ってました!」などの掛け声を一緒に実践するうちに、子どもたちのテンションが高まります。
 ワークショップでは自分が良いと思った時に親指を立てて「ええやん!」のリアクションを出します。隣の人が考えた芸名(例:なり亭サッカー選手)を見て「ええやん!」、面白いと思った友達のネタを聞いて「ええやん!」など、会場に「ええやん!」の声が聞こえはじめました。

演じて気づいた、人を楽しませるための「笑い」
 じゅげむさんは「ドラえもん」をもとに普通の話と落語の違いを説明します。創作落語「ドラえもん」を演じはじめると会場の雰囲気ががらりと変わり、子どもたちの視線は高座に釘付けになりました。
 グループワークで、どら焼きの食べ方やお茶の飲み方、のび太の部屋の襖を開ける所作などを練習します。特製法被を羽織って高座に上がった子どもは、すっかりドラえもんのキャラクターになりきって落語を演じ、観客の子どもたちからは「ええやん!」の掛け声がかかります。
happi 続いて、じゅげむさんが落語の小道具である扇子と手ぬぐいの使い方を実演すると、子どもたちは鉛筆を使って蕎麦やうどんを食べる練習をはじめました。休憩後、古典落語の「時そば」ならぬ「時うどん」に子どもたちは真剣に聞き入ります。

 各自でオリジナルの創作落語「時そば」を考案し、「前座」「中トリ」「大トリ」の順番で高座に上がります。発表は挙手制で、客席からは「待ってました!」の声が上がりました。
 特製法被には「わたしも落語のキャラクター/あなたも落語のキャラクター」という文字が染めてあります。各自がキャラクターになりきり、「くすぐり」と「オチ」のある会話を聞かせ合いました。
 「『笑い』には色々あって、私たちの周りには人を傷つける『笑い』もある。落語の『笑い』は、意地悪なものではない」というじゅげむさんの言葉は、多くの子どもたちに強い印象を与えました。自分が楽しみ、他人を楽しませる「笑い」を考え、また、友達の落語から新しい視点での「笑い」に気づくことのできた時間となりました。  [文:世田谷文学館 宮崎京子]