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アートルポ

世田谷パブリックシアター、音楽事業部、生活工房、せたがや国際交流センター、世田谷美術館、世田谷文学館が区内それぞれの拠点で、独自性と創造性に富んだプログラムを展開しています。芸術の輪を広げる活動、次世代を育む活動、地域文化を創造する活動など多彩な取り組みをご紹介します。

せたがや和の音楽祭

2019/12/02更新

せたがや和の音楽祭
<音楽事業部 2020カウントダウンコンサート>

東京2020へ向けて、カウントダウン!

 アメリカ合衆国のホストタウン・共生社会ホストタウンとして、また馬術競技開催の地として大きな役目を担っている世田谷区が、東京2020大会を「音楽の力で盛り上げていこう!」とカウントダウンコンサートを開催しました。
 世田谷区から日本文化の魅力を発信。会場は熱気に包まれました。

エネルギー溢れる太鼓のリズム
 舞台に明かりが照らされると、ステージに並べられたたくさんの和太鼓と子どもたちの姿が。「ソーレッ!」という掛け声とともに『千の海響』(林英哲作曲)の演奏がスタートし、太鼓の豪快なリズムとともにコンサートの幕が開きました。
 「Setagaya太鼓塾」は、和太鼓への情熱をもった世田谷区の子どもたちが、東京2020を応援しようと「キックオフコンサート」(2020年7月開催)出演を目標にした3年間プロジェクトです。小学5年生から高校生まで総勢68名の子どもたちによる和太鼓の音は大迫力!体の芯までその振動が伝わってきます。
 実は、Setagaya太鼓塾にとってはこれが初舞台。一人ひとりが大きな拍手を受け、これまで一生懸命積み重ねてきたことを披露できた、と充実感あふれる表情が舞台袖ではたくさん見受けられました。

東京2020、そして未来への挑戦
 東京2020を1年後に控え、保坂展人世田谷区長が、林英哲Setagaya太鼓塾塾長や吉越奏詞選手(パラリンピック馬術)、寺田明日香選手(陸上競技)とともに、未来への挑戦について熱い意見を交わしました。
 生まれつき脳性まひを抱えた吉越選手は、治療の一環として行ったホースセラピーで馬と出会い、そこから馬術競技の道へ進み、大会出場を目指しています。
 また、寺田選手は、ハードルで数々の成績を残すも相次ぐけがや病気で一度は現役を引退。しかし、現在は「ママさんアスリート」として大会を目指し、9月には日本新記録をマークしています。
 Setagaya太鼓塾で和太鼓指導を行ってきた林英哲塾長は、「太鼓奏者はアスリートに近い」「和太鼓は身体全体が楽器の一部となるため、入念な準備運動が必要」というお話も。和太鼓とスポーツ、似ている部分が非常に多くあるようです。
 こうした各方面で活躍されているゲストの方々のお話は、大変貴重なものであると同時に、東京2020に対する期待をより一層膨らませるものでした。

力強さと華やかさで締めくくられたエンディング
 林英哲塾長、英哲風雲の会による演奏が始まると、空気が一変。圧倒的な響きと洗練されたパフォーマンスで会場はピリッとした緊張感に包まれました。
 そして、いよいよ今回のメインであるSetagaya太鼓塾と東京都市大学付属中学校・高等学校吹奏楽部によるスペシャルなコラボレーション。作曲家・宮川彬良氏がこの日のために、冒頭で演奏した『千の海響』のブラスバンドのパートを書き下ろしました。和太鼓と吹奏楽の異色の組み合わせは大きな相乗効果を生み、和太鼓の力強さと吹奏楽の華やかさでステージのボルテージは最高潮に!観客を圧倒する熱い1日が幕を閉じました。

さあ、みんなで応援しよう!
 東京2020は、もうすぐそこ。この世界規模の祭典が、身近な場所で開催される幸運と感動を、多くの方々と分かち合っていきたいと思います。Setagaya太鼓塾の集大成である下記コンサートで盛り上がり、東京2020を一緒に楽しみましょう!  [文:佐藤根真愛(公演制作担当)]

〜2020キックオフコンサート〜
「 和のこころ Ring of Peace 」●2020年7月5日(日) 昭和女子大学人見記念講堂
※予定していたコンサートは新型コロナウイルスの影響で、中止となりました。



Setagaya 太鼓塾

2019/08/01更新

Setagaya 太鼓塾
<音楽事業部>

世田谷から世界に向けて 子どもたちの和太鼓が響く!

東京2020を応援したい!「Setagaya 太鼓塾」では、子どもたちが集まって、世界に知られる太鼓奏者、林英哲塾長のもとで太鼓の練習に励んでいます。2020年に世田谷区主催「2020せたがやキックオフコンサート」で和太鼓を披露するため、18年から3年かけて行っているプロジェクトです。
現在は、今年8月12日に開催する「〜2020カウントダウンコンサート〜せたがや和の音楽祭」に向けて猛練習中。
2人の参加者から、和太鼓にかける思いを聞きました。話してくれたのは、村上一樹君と小西拓翔君、ともに小学6年生です。

―――太鼓塾にはどんな子たちが集まっていますか?
村上 「小5から中高生まで70人くらいいて、水組、風組、空組に分かれて稽古しています。いろいろな学校から集まって来ているので、入ったときは知っている人はひとりもいませんでした。」
小西 「僕たちも、お互い知らない同士でしたが、練習しているうちに、自然にしゃべるようになったよね。」
―――先生方や練習の様子はどうですか?
村上 「林塾長、講師の先生方が最初に演奏してくれたとき、迫力があってすごかった。あとで動画も見たけれど、めちゃめちゃカッコよかった。」
小西 「練習の日は早めに来て、自分たちで太鼓を出して自主練をしています。6時になると先生方が来て、2時間のワークショップです。始めは少し疲れるけれど、太鼓を打っているうちに慣れてきて、最後の方は大丈夫になります。」
村上 「叩くと楽しくて、疲れを忘れるよね。」
小西 「最初のころは手のひらにマメができたけど、持ち方を調整したり、手の皮が強くなってきたりして、今はできなくなりました。」
―――コンサートで演奏する曲について教えてください。
村上 「《千の海響》という7、8分くらいの長い曲です。長胴太鼓、桶胴太鼓、締太鼓という3種類の太鼓があって、僕は長胴太鼓という主役の太鼓を叩きます。」
小西 「僕も長胴太鼓で、派手に大きな音を出したいので、自分からやりたいと言いました。《千の海響》には、『さあさあ、始まる、人々ようこそ、どどん、どどん、どんどん打ちましょ・・・・・・』という歌詞があって、それを心の中で歌いながら、歌に合わせて太鼓を打ちます。」
村上 「力まかせに太鼓を打っているように見えるかもしれませんが、そうじゃなくて、みんなでひとつの歌を奏でている感じなんです。」
―――コンサートも近づいていますが、心境は?
村上 「みんなに和太鼓の音や力強さを伝えられるので、楽しみです。」
小西 「東京でオリンピック・パラリンピックが行われるのは50年に1度くらいだから、自分も応援していきたいです。貴重な体験になると思います。」

 ≪ 塾長・講師から ≫
林英哲 塾長 「和太鼓を経験した子は、自分を表現するようになったり、積極的になったりということがよくありますが、最終目標やイメージを押しつけず、のびのびと叩いてもらっています。僕らが身体で見せて、身体で伝えるものを、自然に受け止めてくれればいい。太鼓塾は自らやりたいという子どもたちが集まってきているので、よく頑張っています。期待してください。」
田代誠 講師 「練習を重ねるうち、みんな心を開いて、いい雰囲気になってきています。子どもたちが自発的に参加した気持ちをくみ取って、ステージでベストな表現ができるように後押ししていきたいです。」
辻祐 講師 「『令和面太鼓』という、即興で太鼓を叩く演目が子どもたちは大好きで、悩みながらも自分なりに考えて、挑戦しています。その生き生きした姿を見ていると、成長しているなと感じます。」

[取材・文:北島章子] [撮影:松谷靖之]


届け、美術とふれあう楽しさ!

2019/04/12更新

届け、美術とふれあう楽しさ!
美術鑑賞教室 向井良吉作《花と女性》(1969年)の前で

世田谷美術館の出張授業とインターン実習

 2018年秋。とある区立小学校の4年生の図工の授業を覗くと、すまし顔をしつつも張り切った子どもたちを前に、微笑みと堅い面持ちを同居させ、教壇に立つ若者の姿が。そう、世田谷美術館の「出張授業」です!
 当館では長年、区立全小学校の4年生を「美術鑑賞教室」に迎え、館内を巡る美術館体験を実施する一方で、希望校には、鑑賞予定の所蔵品を中心に紹介する「出前授業」を、事前(時に事後)に行います。この授業を行うのは、東京学芸大学の主に3年次に在籍する当館インターン実習生たちです(毎年約10名)。彼らは美術館で毎週行う勉強会で、担当学芸員らと共に授業案の検討と改善を重ねています。
 本稿にご紹介する出張授業では、アルミニウム鋳造のレリーフ作品・向井良吉作《花と女性》(1969年)をテーマに、まず、「レリーフ」という造形表現の解説を交えながら作品図版を鑑賞しました。次に、アルミホイルを手に文房具等の日用品(自分たちの手や顔も!)の型どりをして小さなレリーフを各自工作した後に、全員の作品を黒板に掲げて鑑賞タイムを堪能!
 「美術鑑賞教室」の当日には、授業担当の学生らと再会し笑顔を交わす児童もいました。館内を巡るなか、美術館の地下にある創作の広場に設置された《花と女性》を鑑賞しに来た子どもたち。広場の壁全面をほぼ覆う銀色に煌めく壮麗なレリーフの前で佇んだのち、その作品全体に浮き出ている色々なモチーフや、装飾的な細部一つひとつを目で追い、発見します。少し離れて、作品全体もじっくり鑑賞。
 インターン実習生と学校との連携により、肩ひじをはらずに美術と出会う楽しい時間を、今後も子どもたちに届けていきたいと思います。  [文:矢野ゆかり(世田谷美術館学芸部普及担当学芸員)]

                                





第7回せたがやバンドバトル決勝大会

2019/04/12更新

第7回せたがやバンドバトル決勝大会
2019年2月17日(日) 世田谷区民会館

人生、ここまで来れたのって、きっとバンドのおかげじゃない?

晴れやかな笑顔、悔しさをにじませた顔・・・・・。グランプリ発表の会場に集まるさまざまな思いのバンドマンたち。仕事の合間に練習を重ねた成果を、この決勝大会にぶつけて熱くならないわけがない。とはいえ、各バンドの演奏レベルは高く、厳しくも温かい審査員の講評を、真剣に頷きながら聞く出場者たちは、充実感にあふれ、少年のようでもありました。

■熾烈なライブハウス予選
 昨年夏より始まったCDによる音源審査、そして下北沢、三軒茶屋のライブハウスで行われたライブ予選。これが本当におもしろい。ハードロック、ジャズ、弾き語り、歌のないインストゥルメンタル等、ジャンルもさまざま。家族でほっこり、尖ったオヤジ、枠にはまらないバンドの数々が、ライトを浴びながら白熱したステージを披露する。スタッフによる審査も熱が入るのは言うまでもなく、出場者同士が盛り上げつつも火花を散らす姿が、これぞバンドバトル!

■バンドバトルの目的
 しかしながら、この「せたがやバンドバトル」の真の目的は、優れたバンドを見い出すことではありません。そもそもせたおん(音楽事業部)主催の公演にやや縁遠い、働き盛りの世代に、地域のイベントに参加してもらおうと立ち上げた企画。
 毎回、応募動機の中には「応募のために職場の仲間とバンドを組んだ」「20年ぶりに昔の仲間が集まり、バンドを再結成した」「バンド活動を通して、地元の人と交流したい」というものが数多くあります。バンド活動、すなわち音楽が、人と人とをつなぐもの、そして人を地域につなぐものとなることが目的なのです。予選で戦ったバンドとの交流ができ、その後一緒にライブをしたバンドもあるそう。こういった出場者同士の交流の他に、区内のライブハウスや商店街、協賛各社の応援や協力がイベントを支えています。
 これからもせたがやバンドバトルを通して、地域の交流を深め、人々の新たなつながりを作っていきたいという想いを、少しずつ、そして着実に広めていきたいと思っています。  [文:黒田たま紀(公演制作担当)]     [撮影:中西多惠子]




生活工房 『ミャオ族の刺繍と暮らし展』より

2018/12/09更新

生活工房   『ミャオ族の刺繍と暮らし展』より
クライム・エブリ・マウンテン vol.1<2017年11月11日〜12月10日展示>

山々に踊る、家族のためにつくられた美しき衣装

生活工房では昨年より、世界各地の山岳地に住む人々の暮らしを紹介していくシリーズ展示「クライム・エブリ・マウンテン」を始動しました。第1弾として取り上げたのは、中国西南部・貴州省の山岳地帯に多く暮らす、ミャオ族(苗族)です。
実はこの展覧会の始まった時期(11月中旬)は、ミャオ族の暦で新年を迎える頃。ミャオ族の村々では、棚田の稲刈りの終わった地域から順に、お正月の準備をするのです。その他にもたくさんある祭礼や、農耕の時節などミャオ族の一年を紹介しながら、「苗族刺繍博物館」(常滑市)からお借りした美しい民族衣装など60点を展示しました。

ミャオ族の衣装は、驚異的に緻密で美しい刺繍で知られています。しかしそれは、裕福な人たちがだけが着るものではありません。男女の出会いの場でもある祭りの際に着て美しく映えるよう、少女たちが競い合って作ったり、母が娘のために作ったりしたものです。なかでもとくに細かな詩集を施すのは、幼子のためのもの。赤ちゃんの背負い帯は、「布目から魔が入る」という言い伝えもあって、下の布地が見えないほどにびっしりと刺繍で埋め尽くします。その厚みを持った刺繍を見ていると、環境の厳しい山地で幼い命を守るために、ひと針ひと針に祈りを込める母の無償の愛が伝わってきます。

展覧会の最中、よく来場者からこんな質問を受けました。「これだけの刺繍をするのに、どのくらい時間がかかったのですか?」──さて、いったいどれほどの時間がかかったのか・・・。自給自足の生活の中では、おそらく丸一日刺繍をしている、などということはないでしょう。野良しごとの合間合間に、懐から小さな布をとりだしては、針を刺す。その布片を服に縫いとめて、このような重厚な衣装が出来上がるのです。さらに糸の材料(綿、絹)を育て、紡ぎ、染め、織るのも自身でやっていることを考えると、この服1点に凝縮された時間の途方もなさを感じます。

展覧会場で来場者が目にしていたのは、刺繍の中に確かに縫い込まれた、ミャオ族の人びとの「祈り」であり、「時間」であったのかもしれません──

「クライム・エブリ・マウンテン」シリーズ第2弾は、2018年9―10月に「漆がつなぐ、アジアの山々」展と題して、中国から東南アジアまで山地帯で作られている多種多様な漆器を取り上げました。さあ、第3弾はどの山に登ることになるのでしょうか。 
 [文:生活工房 竹田由美] [撮影:田中由起子]